東京の国立駅南口から少し歩くと、多くの緑とともに歴史と風情を感じさせる建物数々が見えてくる。経営者や政治家を輩出してきた名門大学一橋大学である。
そんな名門、一橋大学を舞台とした恋愛シミュレーションゲーム(以下、ギャルゲ)「ばしジョ!」なるゲームがあるという。
「ばしジョ!」を知るきっかけとなったのは作者であるtomoさんからの一通のメールであった。「一橋大学を舞台にしたギャルゲがあるので取材してほしい」との内容。実際にプレイしてみたところ、「なんだこのチープクオリティ、しかも難易度によってキャラが違う(笑)」という感想。しかし、一橋大学でギャルゲを作ったきっかけも聞いてみたいし、どんな人が作っているのかも気になる…。
気になるのだから仕方がない!ということで実際取材に行ってみることにした。
一橋大学発のギャルゲ、「ばしジョ!」
待ち合わせ場所である一橋大学東門前にで待っていると、「コウエンジ」のボックスロゴが入ったTシャツを来た人物が現れた。彼が「ばしジョ!」の作者 tomoさんであった。もう一人の作者 サラダさんも合流し、取材は二人で受けてもらうことになった。
– – 「ばしジョ!」はどのようなきっかけで作られたのですか?
tomoさん :「僕たちは『一橋大学広告研究会HASC』というサークルに所属しているのですが、そのサークルは特定の活動があるのではなく、『やりたいこと、しよう』というのがコンセプトのサークルなんです。 広告研究会では、学期のはじめにやりたい企画をサークル内でプレゼンし、その企画に人数が集まったらプロジェクトで成立します。『ばしジョ!』は去年の9月に僕が企画を提案して実際にゲーム化できたプロジェクトです。」
サラダさん : 「tomoさんがプレゼンした時に、恋愛シミュレーションゲームはフィクションの内容のものが大半の中、実際の大学生活をなぞるというコンセプトは今までありそうでないんじゃないかと思い、面白そうだから参加しました(笑)」
– – 実際の大学生活をなぞるというのはどういうことですか?
tomoさん : 「一橋大学では4月に入学してから6月にある新入生主体の学園祭、KODAIRA祭までの期間を『新歓期』と呼んでいます。『新歓期』ではクラスで様々な行事があり、そんなこんなでカップルができたりできなかったりって時期なんです。ちなみに新歓マジックって呼ぶんですが。そんな新歓マジックを体験できなかった人たちが自分たちの周りには多くて、これを追体験できるようなゲームを作ったら面白いんじゃないかと思って作りました。なので、内容も実際の学校行事をなぞって進んでいきます。」
「しかしゲームを作って発表するとき、クオリティの高さで勝負することはできないと思い、あえて「クオリティの低さ」で勝負することにしました。バッドエンドに入ってからの展開が急で雑だったり、モブキャラが「いらすとや」だったりするのは、もちろん僕たちのキャパシティの問題でもありましたが、それ以上に「ネタにしながら」クオリティの低さを楽しんでもらいたい、という狙いがありました。いわば「クオリティの低さ」というブランディングですね。」
– – 初めてのゲーム制作はどのようなことが大変でしたか?
tomoさん : 「ゲーム制作自体はフリーの恋愛シミュレーションビルダーを使用したので、少しJAVAの知識が必要だったことを除いては簡単でした。」
サラダさん : 「どう面白くするかというところが一番力を入れたポイントだったのですが、大変というよりみんなで楽しみながら作ったので、制作自体はそれほど大変ではなかったですね。」
tomoさん :「『ばしジョ!』のTwitterがあるのですが、昨年そこで『クリスマスイブに、ばしジョ!第一弾公開!!』って告知したのはいいものの、僕のスケジューリングが甘くて、12月20日まで全然出来上がってなかったんです(笑) というのも、シナリオ自体は出来上がっていたのですが、選択肢の面白さにこだわりすぎて、みんなでずーっとあれがいいこれがいいってやってたら、リリースまで残り4日しかありませんでした。その4日間は本当に必死に作りましたね。」
– – 「ばしジョ!」の見所を教えてください。
tomoさん :「ゲームは『イージーモード』と『ハードモード』を選択できるのですが、ばしジョ!はただの難易度選択ではありません。これは当初プレゼン時から推していた部分なのですが、現実に即した内容にしてあります。」
「現実に即して考えてみると、『イージーモード』はモテる人、『ハードモード』はモテない人です。なので、ゲームの主人公はモードによって違います。設定としては『イージーモード』のモテる人は男女共学出身、『ハードモード』のモテない人は男子校出身です。」
サラダさん :「ちなみに僕たち二人は男子校出身です。しかも中高6年間、ゲームシナリオは『ハードモード』の脚本を僕が書いたのですが、自分の分身だと思って書きましたね(笑)結構自己投影しているので、共感してくれる人がいてくれたらいいなと。」
tomoさん :「『イージーモード』は僕が脚本を書いたので9割は妄想です(笑)」
– – 「ばしジョ!」をどのような人に遊んでもらいたいですか?
tomoさん :「もちろん誰でもいいのですが、例えば高校生や大学に入学してすぐの人に遊んでもらえたら、大学ってどんなんだろうっていうのがなんとなくわかると思います。あとは受験生だったら一橋大学に興味をもってもらえてたらうれしいし、大学を卒業されている方には懐かしいなと思ってもらえればいいなと思います。」
– – 「ばしジョ!」の次回作はいつですか?
tomoさん :「昨年のクリスマスにイブに『イージーモード』を発表して、今年の4月に『ハードモード』を発表しました。結構内輪では反響がありましたし、Twitterでも自分たちの知らないところで1300リツイートされていたりとそれなりに反響がありました。まだ詳細は未定ですが、次回作も検討しているので楽しみに待っていていただけると嬉しいです。」