ゲーム企業が知るべき新型コロナウイルスの影響とは

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、世界経済に関する短期的・長期的な見通しが著しく不確かになっています。ゲーム業界も例外ではありません。ただし、現在のゲーム業界は大量のデータを集積及び駆使しているので、ユーザー行動の傾向を把握し、対応策について少なくとも一定の示唆を得られるようになったことがわずかな救いです。
ironSourceが保有するデータを参照しながら、今回のいわゆるコロナ騒動で最も大きな影響を受けた中国、イタリア、韓国、米国の状況を見てみましょう。その影響をできる限り正確に測るために、各国がロックダウン(都市封鎖)を実施した以前と以後それぞれの週日における各指標に対する実績の平均値を比較しました。

このような分析を行う上では、週日と週末のデータを区別する必要があります(全般的に週末の方がKPI達成率は高くなる傾向にあります)。今回の調査において用いるデータは、あくまでも週日の動向のみを示したものであることにご留意ください。また中国における新型コロナウイルスの感染拡大は、あらゆるKPIの達成率が飛躍的に高まる春節(中国の旧正月)の時期と重なりました。よって中国におけるコロナ騒動の影響を測る上では、春節の連休が終了した後に起きた変化を分析対象としました。

傾向①ゲームに興じるユーザーが増加

世界中の人々が屋内でより多くの時間を過ごすようになった結果、ゲームに興じるユーザー数が増加しました。大手通信事業者のVerizonによると、2020年3月におけるゲーム関連のデータ通信量は前週比で75%増加。またironSourceのデータでは、全体的にゲームのデーリー・アクティブ・ユーザー(DAU)が増えたことが分かっています、国別では米国で13%、韓国で23%、イタリアで15%、中国で60%増加しました。とりわけ中国ではDAUが春節の時期に一気に伸びましたが、その後も落ち込むことなく、高い数値を維持しています。

傾向②ゲーム内広告に対するエンゲージメントが高いユーザーが増加

また動画リワード広告に対するエンゲージメントが高いDAUの数もすべての調査対象国で増加しました。言い換えると、ゲームのプレイ中に動画リワード広告を視聴するユーザー数が増えたということです。ゲームを楽しむ機会が増えたことに応じて、ゲーム自体と動画リワード広告へのエンゲージメントが高まったということが考えられます。米国では6%、中国では15%、韓国では6%、イタリアでは7%向上しました。

傾向③: ゲーム内広告の一人当たりの視聴回数は増加せず

ところが、エンゲージメントの高いユーザーが一日当たりに視聴する動画リワード広告の数には変化はありませんでした。動画リワード広告を視聴するユーザー数は増えているものの、一人当たりの広告視聴回数には変わりがないことを示しています。

傾向④ゲームのインストール数は増加

より多くのユーザーがゲームに興じ、またゲーム内広告(その大部分がその他のゲームを宣伝する広告)を視聴したことで、新しいゲームのインストール数が増加しました。ロックダウンの実施中に、新しいゲームを探す機会が増えたからでしょう。米国ではIPM(1,000impあたりのインストール数)が25%、中国で7%、イタリアで11%向上しました。

傾向⑤: eCPMはやや低下

広告表示回数に占めるインストール数の割合が増えていることは、自社のゲームを宣伝するために広告を出稿するゲーム企業にとっては朗報です。ただし、広告在庫を提供する側は、必ずしもその恩恵を受けているわけではありません。一つのインストール当たりの広告収益を示すeCPMが米国で7%低下しているからです。ゲーム企業を除いたいわゆるブランド広告主が、不況に備えて広告費を削減し始めているためと考えられます。

分析結果

不況時にまず削減対象となるのが広告費です。とりわけゲーム以外の市場においては、この傾向が実際に見られ始めています。旅行業界では広告支出が38%も落ち込み、またグローバル規模での全体的な広告支出額の伸びは当初想定していたよりも緩やかになり、GoogleとFacebookが2020年に収益を40億ドル減少させるといった予測が各調査機関から発表されています。つまり一般的な広告主がモバイル広告支出を削減する一方で、ユーザーは突然増えた可処分時間を過ごすために新しいゲームを求めているというのが現状です。ゲーム会社の新規ユーザー獲得担当者はエンゲージメントの高いユーザーを獲得するための戦略を練り直す必要に迫られています。

ユーザー獲得キャンペーンの成果を最大化するためには、マネタイズとマーケティングの両面から検討しなければなりません。ほんのささいな変化が、LTV曲線つまりは広告の費用対効果に大きな影響を与える可能性があります。当社の分析では、1ユーザーあたりの平均的売上の変化の有無やその内容はジャンルごとまたはゲームごとに大きく異なります。広告主は関連データを注視しなければなりません。詳細についてはこちらの記事(英語)https://mobiledevmemo.com/how-to-manage-marketing-spend-during-a-recession/をご覧ください。

マネタイズ担当者及びプロダクト開発担当者は、ゲーム体験を最大化するために、新規コンテンツやゲーム内イベントの企画により多くの時間を割くべきかもしれません。広告の種類や位置そしてウォーターフォール設計についての綿密なA/Bテストを繰り返すことで、広告視聴におけるユーザー体験についても合わせて慎重に検討を重ねる必要があります。

新型コロナウイルスの拡大による混乱が、世界経済や社会一般に対して今後どのような影響をもたらすかについてはまだ定かではありません。ただ少なくともゲームアプリのマネタイズとマーケティングに関する当面の対応策を練るにあたっては、本記事の内容が一助となれば幸いです。

ironSource 会社概要

世界の主要モバイルゲーム企業を顧客とする ironSource は、モバイル広告のメディエーションプラットフォーム、モバイル広告ネットワーク、データドリブンなユーザー獲得プラットフォームといったゲームアプリの成長を支援する様々な機能を開発しています。2010 年に設立された当社は、テルアビブ、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、北京、深圳、ベンガル―ル、ソウル、東京に拠点を置くグローバル企業です。詳細は下記 HP をご参照ください。 https://www.ironsrc.com/ja/

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